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外角低めのストレート


昨年秋頃の話になりますが、長野県の観光地としてにぎわう善光寺門前に、およそ100年前に建てられた老舗足袋屋をリノベーションしたレストラン「HAKKO MONZEN ~Craft Food Parlor~」がオープンしました。

同県山ノ内町・湯田中温泉で2016年のオープン以来、信州の発酵食品を使ったメニューで人気を博してきたお店「HAKKO」の2号店です。

オーナーさんとはオープンの3日前に共通の友人を介して偶然出会い、その時はお互いに簡単なご挨拶を交わした程度でしたが、しばらくしてから幸運にも改めてじっくりお話しする機会をいただきました。オーナーさんが駆け抜けてきたこれまでとHAKKOのこれからを整理する意味も含めて、ブランドを体現するキービジュアル撮影にトライしてみようということになったのです。

さて発酵食はどうしても見た目が地味。フードフォトのキービジュアルとしては難題の部類に入ります。何度もアイデア出しを重ねて撮りおろしたのが上の写真です。

今回のケースはアートディレクターやデザイナーさんが間に入っておらず、そうした役割もおった苦労のある「仕事」でした。ですがその分どこか「私的な写真」のようでもあります。つまり、挑戦していますがこれが変化球だと自分では思っていないのです。

先日逝去されたノムさんこと野村克也さんは「困ったら基本に帰れ」と口を酸っぱく語っておられました。投手の基本は外角低めのストレートだと。

今回の撮影は言うなれば磨いてきた渾身のストレートを外角低めいっぱいに投げ込んだ、そんな気持ちです。

ストライクのコールは響くだろうか。

- 多謝 -

コーディネートは編集室いとぐちの塚田結子さん。

丹念な本物の素材集めと器選び。感性の鋭いスタイリング。

上手にカウントを整えてくれて、勝負球を受けてくれてありがとうございました。

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